【コミュニティ・インタビュー】 ハースストーン冬季選手権日本代表、mattun

「このゲームは努力することで無限に強くなれるんです」。

3月12日と13日の激戦を勝ち抜き、日本代表となったmattun選手は競技としてのハースストーンをこう語る。

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mattun選手

mattun選手がハースストーンを始めたのは2年前のオープンベータテストである。誰でも簡単にプレイできる手軽さと対戦の奥の深さに魅力を感じたという。以来大会に参加するほか、賞金総額25万円の「Wikiリーグ」というオンライン大会を有志と共に開催したり、戦術についての考察記事を執筆するなど多方面で活躍してきた。

そんなmattun選手は今回の日本選手権をどんな思いで戦っていたのだろうか。今週25日から始まるアジア太平洋選手権を前にインタビューをおこなったので、その内容を以下に掲載する。

―改めて、日本選手権優勝おめでとうございます。試合から約1週間経ちました。今のお気持ちを聴かせてください。

mattun: ありがとうございます。勝ててよかったと思いますが、「出られてよかった」という気持ちも強いですね。

去年の日本選手権のときはポイントが1点足りなくて出場権がもらえなかったんです。しかも、ポイント獲得の望みを賭けた最後のランキングでは101位で終わってしまい、ポイントがもらえず……。だから今回は「絶対に出場する」と決意して練習に熱を入れました。

―具体的にはどのような練習をされていたのでしょうか。

mattun: 海外のオンライン大会に片っ端から参加して経験を積みました。頻度としては週3~4回です。日本だと大会基本フォーマットの「4ヒーロー1禁止のコンクエスト形式」を採用した大会や練習会がほとんどなかったので、海外の大会で経験を積むしかなかったんです。

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紙上で大会のヒーロー構成を練るmattun選手

―いくつかの海外大会でも優勝されていました。

mattun: もちろん途中で負けているのが大半ではあるんですけれども。フォーマットの練習のほかにも、大会に出ることで「重要な舞台での試合に慣れることができた」というのは大きかったですね。「心のバランスの取り方」とでも言いましょうか。

決勝戦とかって独特な緊張があるんですよ。プレイ中にはミスをすることもよくあります。でも、そこで気持ちが乱れたりしたらいけない。「いかに気持ちを立て直し、平常心でプレイするか」。それを大会で学ぶことができました。

―迎えた日本選手権では、独特なデッキを使って観客を沸かせました。

mattun: これは大会基本フォーマットの「4ヒーロー1禁止のコンクエスト形式」に合わせて調整した結果なんです。「相手のドルイドを禁止」し、「ドルイドに強いデッキに対して強いデッキ」を揃えました。

大会で結果を残した国内選手のデッキリストを見ていると、対ドルイドを意識している選手が多いことに気付きました。なので対ドルイドに強いとされる「シークレット・パラディン」「ズー・ウォーロック」「パトロン・ウォリアー」等に強いデッキを用意すれば有利になるのではないかと考えたんです。今回プリーストを採用したのも前述のデッキに戦えるのが理由です。

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mattun選手のデッキリスト(Day 1)

―日本選手権で印象に残っている試合はありますか?

mattun: 初日のグループ決勝で当たったSweep選手との試合です。彼は交通費等の関係で日本選手権に参加できないという話でした。なので練習相手としてヒーロー構成など、戦術を全て相談していたんです。ところが、後から選手に交通費が支給されることが決まり、Sweep選手が出られるようになって……。

―グループ決勝で当たってしまった。

mattun: 「まさか」と思いましたね(笑)。どの試合も辛かったのには変わりないんですが、これはお互いに手の内を知り尽くしている相手との対戦だったので、特に印象に強く残っています。

―視聴者の間では、「ETC(エリート・トーレン・チーフテン)登場時のエアギター」や「プリーストのまさかの敗北」等が盛り上がっていました。

mattun: ETCは……寝てなくて体が限界に近かったので、とにかく自分のテンションを上げようと必死でした。エアギターもそのためです(笑)。プリーストは……感謝の気持ちが足りなかったですね(笑)。

日本選手権のハイライトシーン

―寝てない、とは?

mattun: 仕事と並行での大会参加だったので、木曜日から一睡もせずに参加していました。合計すると80時間ぐらいでしょうか。予選も決勝戦も同じです。

―80時間! そんな状態で戦っていたのですか。

mattun: 優勝後はぶっ倒れるようにして寝ました(笑)。

―mattun選手は社会人として家族を養う中、大会に出場する以外に自分で大会を運営したり、記事を執筆したり、ありとあらゆる活動をしています。その活動を支えているものは何なのでしょうか。

mattun: 「ハースストーンが好きだから」の一言に尽きます。でも、社会人ゲーマーの方々には自分よりももっとがんばっている人もいますから、自分が特別だという意識は無いですね。

―mattun選手が思う「ハースストーンの魅力」について教えてください。

mattun: 1ゲーム10分でできるという手軽さがある一方、競技として真剣にプレイすることもできる。いろいろな遊び方ができるのが魅力ではないかと思います。私も変なデッキを使って遊ぶことは多いですよ。

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mattun選手のデッキリスト(Day 2)

―mattun選手は有志の方と一緒に「Wikiリーグ」というオンライン大会を2015年4月から開催されています。この大会を始めたきっかけについて教えてください。

mattun: 始めよう、と思ったのは2014年の世界選手権の配信を観ていたときです。本当に強い選手が戦っているのに、視聴者の間では「運だけで決まる」といった意見が多かったのが残念でした。また、昨年の世界選手権ベスト4のKno選手をはじめ実力ある選手も当時からいたのですが、コミュニティに名前を知られていなかったんです。

そこで日本のオンライン大会を開き、ちゃんとした日本語の解説も用意して「選手がどんなことを考えてプレイしているか」を説明しようと思いました。そうすれば「ハースストーンは実力で決まるゲーム」で、「日本にも強い選手がいるんだ」ということが伝わるんじゃないかと考えました。

ほかにも招待制度を入れ、レジェンドランク100位以内に到達したプレイヤーが招待選手として参加できるようにもしましたね。これが元になって全体的な国内プレイヤーのモチベーションが上がればいいな、と思っていました。

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Wikiリーグ

―4月末~5月初頭には拡張版「旧神のささやき」と共にスタンダード・フォーマットが導入されますが、こちらの印象は?

mattun: 古いカードセットが一部使えなくなるということで、環境が一新されそうな点が楽しみです。今の環境も嫌いではないのですが、ドルイドとパラディンがずっと上位に食い込んでいますので……そろそろ変化がほしいかな、と(笑)。新カードについては、やはり全てのカードが発表されない限りはなんとも言えないですね。

―アジア太平洋選手権の話に移りましょう。注目の選手はいますか?

mattun: HCTポイント1位で出場を決めたHandsomeguy選手でしょうか。いろいろな大会で結果を残しているので警戒が必要です。そのほか去年の世界選手権にも出場した台湾のPinpingho選手も要注目だと思っています。

―海外への渡航経験は?

mattun: 今回が初めてです。以前渡航する計画がありパスポートを準備していたのですが、結局流れてしまいました。期限が切れていたので、今回のためにパスポートも更新しました。

―試合に臨む意気込みを聞かせてください。

mattun: 海外の選手権というのは、選手の誰もが一度は夢見る舞台だと思います。試合は勝たないと意味がないですし、世界選手権出場を目指すためにも全力で戦うつもりです。それと同時に、自分が好きなゲームなので思いっきり楽しみたいと考えています。

応援してくださっている方々には、「どんな困難に直面してもあきらめない姿」をお見せしたいと思います。

―どうもありがとうございました。


関連リンク

mattun選手のTwitter:@mattun_hs

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mattun選手が最も好きなカードは埋葬。「相手の主力ミニオンをいただいたとき、私はいつも感謝の気持ちに溢れています」という

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